未来を競った会社が、究極に普通の時計を作った。
F-91Wは1989年に登場しました。時刻、日付、曜日、ストップウオッチ、アラーム、ライト。機能だけなら派手ではありません。しかし厚さ8.5mm、重量21gの薄型軽量ボディに、日常で必要なものを小さくまとめています。
黒い樹脂、青いライン、赤いアクセント、長方形の液晶。視認性のための要素がそのままグラフィックになっています。ブランドロゴを大きく見せなくても、遠目でF-91Wだと分かる。これは機能美がアイコンになった例です。
さらに面白いのは、後年“レトロ”として復活したのではなく、ずっと現役だったことです。昔のデザインを再現した復刻品とは違い、F-91Wは時代の方が一周して近づいてきた。デジタル機器が大型化・高機能化した時代ほど、必要最小限の液晶時計が新鮮に見えるのです。
A159WやA168のようなメタル系ロングセラーと並べると、同じCASIO DIGITALでも「樹脂の道具感」と「銀色のアクセサリー感」という二つの方向が見えてきます。
参考:CASIO — F-91W Special Page ↗ CASIO Watch Heritage 1980s ↗